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Message from coba

谷への想い

ガンガラーの谷を初めて訪れた日の衝撃を、

僕は忘れません…。

2009年3月、僕のホームページに一通のメイルが届きました。

そこには「沖縄で貴方に演奏してほしい場所があります。一度観においで下さいませんか」と、ありました。そのシンプルでそっけない文章は、なぜか僕の心に引っかかりました。そしてその後、別な仕事で沖縄を訪れた際、レンタカーを借りて、その地を訪問しました。

そこは巨大なケイブ(洞窟)でした。ここで演奏したら、どんなにか気持ちがいいだろう…そんな思いが心をよぎりました。

 

しかし…僕がこの音楽祭を企画しようと思った強い衝動は、この直後に目撃したものによって与えられました。

 

そのケイブを抜け、暫らく歩くと、いよいよ「ガンガラーの谷」が姿を現し始めました。ガジュマルの巨木に鬱蒼とおおわれた森に、無数に点在する鍾乳洞たち。

その中には数百年前から続く子授け祈願の信仰対象として、地元の人々が通う鍾乳石。道の脇のあちこちには、まだ考古学者たちが発掘調査途中のブルーシートが敷かれたまま。この太古が奇跡的に残された場所を、安易に観光化しないで保存しようという、オーナーの強い意思が感じられました。そして僕が最も感動したのは、小道の脇にさりげなく点在するお墓でした。聞けば数百年前のもので、いずれもいまだに縁者の方々が集まり、墓に祈りをささげているとのこと。

僕は雷に打たれたようなショックを感じました。

この谷は単なる観賞用の自然博物館ではなく、古代から現在まで、人々と共に生き、育まれてきた場所…祖先の魂が眠る聖所であり、今に生きる人々が自分の過去に思いを馳せる特別な場所なのです。都会に暮らす僕らが失ってしまった“原点”のようなものを発見した気がしました。「生きて死ぬこと」「過去の魂との交わり」「悠久の時間の流れ」「自然の中で生かされること」…そんな特別な場所で音を奏でることには、特別な意味が生まれるように感じられました。

 

「知る」ということは「責任を受け取る」ことです。ガンガラーの谷で音楽を奏でることは、ここに眠る魂を尊び、我々を育む自然を畏怖すること。そしてそれは今に生きる我々が、共に生を喜び合う宴です。「ガンガラー 魂の音楽祭 マブイオト」に関わるであろう方々は、出演者もスタッフも観客も、皆ガンガラーの谷から招かれているのだと感じます。

 

人生は出会いの魔法の連続です。超常現象など全く信じない不信仰者の僕が、こんな感覚を持つなんて…ガンガラーの谷に感謝です。

人と自然と音楽を愛でる宴、

それが「魂の音楽祭 マブイオト」です。

2009年8月26日 coba

感謝の「マブイオト」10周年! 

ありがとうございます。魂の音楽祭マブイオトが10周年を迎えます。
この10年を語るには、ガンガラーの谷を守る人々のことを語らざるを得ません。「この地を世に訴求しながら、それを通して広く人々に奉仕したい」と説く、株式会社南都会長の遺伝子を引き継ぐ精鋭たち。彼らが日々谷と会話しながら、谷の自然を守り続けます。


 初めてこの地を訪れて、その姿に深く感動した僕は、ここで音を奏でたいと思いました。そうやって魂の音楽祭「マブイオト」が生まれました。
 最初のミーティングで「皆でほんの少しずつ痛みを分かち合えば、素晴しい事が実現できる筈です」という僕の提案に、喜んで身を投じて下さった熱い関係者の皆さま。「まだ日本のどこでもやっていないアーティスト同士の初めてのコラボレーションをこの谷で実現させよう!」という無謀な試みを、一度の例外もなく続けて来られたことは、奇跡の歴史です。


 それはまたガンガラーの谷と守人の歴史でもあります。谷の守人はマブイオトの担い手となって、10年間でこの音楽祭を見事に成熟させてくれました。
正に皆で少しずつの痛みを引き受けながら、10年はあっという間に過ぎました。毎年ゲストたちが一斗瓶に注ぎ続けた泡盛も10年の古酒となりました。


 そして僕らの小さな痛みは、大きな喜び、偉大なやりがいとなり、膨らんでいきます。僕はこの10年で沖縄がますます好きになりました。
 人生は「出逢い」と「選択」で変わります。今年、10年目の奇跡を僕らと一緒に作りませんか。ここで未来を眺めながら10年の古酒を飲みましょう。


僕ら一人一人が沖縄の自然と文化の守人となって、貴方とこの谷に呼ばれる幸運を分かち合えたなら、無上の幸せです。感謝。   
 

2018年8月       アコーディオニスト・作曲家 coba

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